二〇一八年【穀雨】

2018年4月23日

この春から、蔵のある柳原地区内の2つの田圃、約一反半の面積で「自然農」という農法での米作りにチャレンジしています。書籍やインターネットで得た情報とロジックを頼りに、独学とも言えないような手探り状態でスタートさせてしまったこの「自然農」を恐れ多くも簡単に説明させて頂きますと・・

田圃が育む生態系を壊さず、できる限り多くの命と作物(コメ)を共存させる事で循環を生み、永続的な営みを目指す

という所謂「自然農法」と呼ばれる農法の一つなのかな、と捉えています。

無農薬・無施肥はもちろん、土は不耕起として除草も最低限しか行わない。「雑草や虫を敵としない」といった事が書かれている本を読み込みながら、どこか生酛山廃などの微生物育成と共通するロマンを感じてしまったのが始まりです。

 

そんな四月二十日、穀雨のこと。

 

自然農では苗代となるスペースを田圃の中に作り、そこに種を播きます。そして芽吹かせ苗を育てた後、田圃全体に移植するような形で田植えを行います。

穀雨は記念すべき種播きの日。まずは苗代となる部分の草取り。

そして区画を作り、表土を数センチ削り取ります。

そして浅く均したところに種を播き、薄く覆い土をして草を被せる。

その後、鳥避けの竹とネットを設置して完成、という運び。

 

機械を使わずに鍬やスコップ、人の手で全ての作業を完結させる事。とてもとても大変でした。土を篩(ふるい)に掛けるだけでも途方もない時間がかかる。作業に参加して頂いた皆、夕方にはぐったり。しかし、農業の面白さはここにあるのだなあと一人耽っておりました。

若者の農業離れ、農家の人材不足が問題視される現代日本の農政。

これには様々な要因があると思うので安直一概には言えないのですが・・農作業が効率・採算を求め形骸化していく中で、容赦の無い困難や美しい生命の息吹を体全体で感じることの出来る大自然との対峙、また工夫と創作によって問題を克服していく達成感など、農業本来の魅力が薄くなっているのではないかなと考えています。

合理化された現代農法には、ときめきが無い。いくらお金が儲かっても、わざわざ田舎に暮らし農業に従事したいと思う若者は育たないでしょう。

この日の私たちのように、何もわからない状態でとにかくやってみる。前に進む。汗を書く。もがく。そう苦労してまでも今年は負けるかもしれない。けど、ゼロではない。いつか播いた種が実り酒となる日に、計り知れない感動が得られるのではないかと期待しています。

このドラマがどんなお酒になるのか、そして皆様にお伝え出来る日が待ち遠しく、しっかり育てます。

 

この秋は 雨か嵐か知らぬども 夏のつとめの 田草とるなり